丸亀暮らし手帖
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 丸亀市の中心部南条町に、お寺と地域住民の垣根を低くし街に心地よい風を吹かせようとする小さなお寺があります。約500年の歴史を持つ陽面山本照寺。この由緒あるお寺の伝統を守るのは一家の大黒柱であるご長男の松本慶一さんとそのご家族の皆さんです。 一般的に経典からの文言などが引用される山門脇の掲示板には住職自らが描いた布教マンガが貼られ、本堂にはなんとも立派なグランドピアノがあります。これらの一見お寺とは似つかわしくないアイテムも、宗教と生活が切り離された現代において、少しでも一般の人とお寺が接点を持つ機会になればと願う松本一家の想いの表れと言えます。 「ここはもともと海賊からお城を守る要塞として建てられました。その後、戦乱の世が治まると飢饉に備え薬草が植えられました。薬膳のお寺だったんです。さらに時代を下ると寺子屋の役目を果たすようにもなりました。」慶一さんがそう本照寺の歴史を教えてくれました。現在はご住職である二人のご兄弟とお母様と共にこの寺の伝統を守っています。 そんな慶一さんは好きという言葉では収まらないほどの昆虫好き。物心ついた頃から虫を捕っては図鑑で調べる毎日を過ごし、いまでは仕事としてその昆虫に携わるようになりました。いま最も力を入れているのは、香川県の自然保護活動の裾野を広げ、県外への流出が続く標本やはく製を地元で適切に管理する環境づくりです。一見、関連性のなさそうなお寺と昆虫ですが、その土地に根づく文化や歴史を未来に継承するという点では同じ想いの元にあります。「地元をよく知ることが、地元を愛するきっかけとなり、その地元愛が地元の発展につながる。」と慶一さんは信じています。P12

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