丸亀暮らし手帖
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 奥様の美保子さんは高松市出身ですが、丸亀市に引っ越してきたその日のことをいまでも鮮明に覚えています。お向かいに暮らす自治会長さんが、荷下ろしが終わるか終わらないかのタイミングで、早々と「あんたら子ども会に入りまいよー。」と声を掛けて下さったのです。それまで暮らしていたマンションではまずなかった交流に驚きました。そして、みんなで暮らすという安心感を一気に感じることが出来たと言います。さて、冒頭のグランドピアノは実は慶一さんのお母様が10年以上も前に置くことを決めたものです。以来、年に数回法要の後にプロの演奏家を招き、各種のコンサートを開催してきました。今ではすっかり定着し、多くの地域住民が本堂で音楽を楽しんでいます。「檀家の方だけでなく、地域の人にも本堂に上がってもらいたい。」まさに、この想いがグランドピアノによって現実のものとなったのです。一家がそれぞれの持ち味を生かしながら500年の歴史を未来につなぎ、地域の交流拠点となろうとする本照寺。慶一さんは「娘たち含め、家族8人にそれぞれ役割があり、誰一人として欠けてもこのお寺は成り立ちません。」と語ります。現代人には少し縁遠くなったお寺。けれど、本照寺には宗教と生活の間を行き来するとても人間味と家族愛にあふれる人たちがいました。P13

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