丸亀暮らし手帖
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 斬新なアイデアや独創的な商品が最初から広く認知されることは多くありません。けれど、本当に価値あるものならば時間とともに必ず世に認められていきます。オーガニックやフェアトレードもそういった類いの商品ではないでしょうか。昨今、都会を中心に支援の輪が広がるこの分野ですが、地方での浸透はまだ充分と言えません。そんな中、丸亀市の通町商店街で新たに雑貨屋を開店した女性がいます。2014年に東京から移住をした山口公乃さん。彼女のチャレンジはいま始まったばかりです。 山口さんは東日本大震災がきっかけとなり移住を決断しました。シンプルに子育てをどこでするかを考えて候補先を探したと言います。移住フェアに参加したり、雑誌やインターネットを通じて情報を集めた後、現地に足を運びました。移住を意識して丸亀市を訪れたのは2014年4月のことです。海も山も近く、町がコンパクトにまとまっている様子が印象的でした。スーパーで売られている野菜の新鮮さが都会とは比較にならず、豊かな地の魚に驚きを覚えました。運転免許を持たない山口さんでも自転車で十分に町を満喫でき、県庁所在地である高松市と比べても、何より土と水を近くに感じられる丸亀市に自然と心が惹かれていきました。 丸亀市に移住する以前は、東京の世田谷区で19年間フェアトレードのお店を経営していました。当初はたった一人で始めたお店も従業員を雇うまでに成長し、経営も順調でした。しかし、お店で自然素材を扱い、お客様におススメする一方で、自分自身はマンションに暮らし、日常的に自然と触れ合える環境にいないことに次第に違和感を感じ始めていたと言います。より生産者に近いところに住まいを移し、生産者とつながっていきたいという想いが次第に強くなっていきました。東京のお店にはすでにたくさんのファンがいましたが、自分と家族の暮らしを考えた時、移住は自然に出た答えでした。丸亀市に拠点を移してから半年が経ち、以前感じていたギャップは徐々に埋まりつつあると微笑みます。P18

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