丸亀暮らし手帖
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 香川県で最も有名な山であり、讃岐富士の愛称でも親しまれる飯野山。その麓で新しい農業のカタチに挑戦する二人の若手農家がいます。鈴木茂昌さんと吉良龍馬さん。鈴木さんは代々お米やアスパラを育てる農家のご長男。進学と同時に丸亀市を離れ、社会人時代もしばらくは県外で過ごしていましたが、30歳を前に地元に戻り、その後専業農家に転身しました。一方、吉良さんは農業機械整備士であると同時に土地を持たない言わばフリーの農家です。繁忙期に人手不足で困る農家仲間がいればすぐに助けに行きます。吉良さんは地元の高校を卒業後、農機具メーカーや船体検査を専門とする会社で働き、あらゆる農機具や機械設備を自分の手で修理する技術を身につけました。ここでの経験が現在の特殊な働き方を可能にしたのです。 二人の最初の出会いは吉良さんが農機具メーカーで営業をしていた頃に遡ります。担当する約400件の顧客の一人が鈴木さんでした。最初は担当地域にいる顧客の一人にしか過ぎませんでしたが、鈴木さんの畑に通うに連れ、気づけば農業の未来やお互いの悩みまで打ち明ける仲になりました。吉良さんが営業マンとして働いていた最後の1年は、なんと365日のうち176日も鈴木さんの畑に足を運んだというから驚きです。農機具メーカーから転職した後も二人の良い関係は続き、休日が来るたびに吉良さんは鈴木さんの農作業を手伝っていました。 そして2015年の初め、吉良さんはサラリーマン生活にピリオドを打ち、フリーでの活動を始めました。こんな二人がいま挑戦し始めたのがブロッコリーやレタスの共同栽培です。お祖父さまの代から飯野町で農業を営む鈴木家には、近年畑を預けたいという依頼がたくさん舞い込んできます。一方でブロッコリーなどの商品作物の市場価値が高まりつつあるのも肌で感じています。二人はこれを絶好の機会と捉え、鈴木さんの持つ遊休地を利用して共同栽培の準備を進めてきました。P22

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